民泊の始め方には複数のルートがあります。それぞれのルートには、特定の条件や手続きが求められますが、選ぶルートによっては比較的手軽にスタートできる場合もあります。物件や規制状況を考慮して、最適な方法を見つけてください。ここでは、民泊を始める際の3つのルートを紹介します。
そもそも民泊って何をするの?
そもそも、民泊とはどのような宿泊所を指すのでしょうか。法律により定められた明確な定義はないものの、観光客の宿泊時に自分の家や部屋を提供し、代金を受け取る形態を指すのが一般的です。
観光名所やイベントのある地域で人気がある宿泊形態ですが、その運営には法的な要件が関わります。民泊を始める前に、法律や自治体の規制を確認し、適切な手続きを行うことが重要です。違法な営業は罰則を伴うことがあるため、注意が必要です。
民泊を始めるには?知っておきたい3つのルート
民泊を始める際、選択できるルートは3つあります。それぞれ異なる要件があり、なかには多くの費用がかかるケースもあるため、慎重な選択が必要です。
住宅宿泊事業法によるルート
このルートは新法民泊として知られ、ほかのルートと比べてハードルが低いとされています。審査は届出に基づく形式的なもので、早期に営業を開始できる場合が多いです。ただし、一部自治体では厳しい審査を行うこともあるため、難易度は地域によって異なります。
必要な設備は、キッチン、トイレ、お風呂、洗面台などに限られます。住宅として通常使用している設備であれば、改修する必要はありません。このルートでは、建築基準法上の住宅として、そのまま営業が可能で、用途変更や工事が必要ないのがメリットです。
一方で、建物が事務所や倉庫として使用されていた場合は、制約が生じることがあります。民泊が可能なのは、住宅として使用される部屋に限られるためです。デメリットとしては、年間の営業可能日数は180日に制限され、さらなる制限がかけられる自治体があることです。自治体の条例を確認しましょう。
また、家主が同居しない場合、運営代行業者へ管理委託する義務があり、自治体によっては、民間の廃棄物処理業者との契約も求められます。
旅館業法によるルート
旅館業法は、もともと大規模なホテルや旅館向けに制定された法律で、要件が非常に厳しいことで知られています。民泊施設には不向きですが、法改正により一部緩和され、少しは容易になりました。
このルートでは、旅行・ホテル営業と簡易宿所営業にカテゴリーが分かれ、それぞれ異なる設備要件が適用されます。民泊を始める際には、物件の構造、現在の設備、周辺地域の需要などを考慮し、適切なカテゴリーを選択しましょう。
このルートの最大のメリットは、365日を通して営業が可能であることです。デメリットは、一部の地域では、旅館業法の許可が得られないケースがあるため、よく調べずに投資や建設することは避けなければなりません。
また、民泊を運営する場合、フロントを設置し、スタッフを24時間常駐させる必要があります。さらに、建物の用途が「ホテルまたは旅館」に変更されるため、大規模な改修工事が必要な場合も考えられます。くわえて、近隣の教育機関への意見照会や、近隣住民向けの説明会の開催など、さまざまな手続きが必要です。したがって、営業開始までに数か月から半年程度の時間を要することを覚えておきましょう。
特区民泊のルート
特区民泊は、外国人旅行者向けの民泊サービスで、国家戦略特区に指定された地域でのみ適用されます。ここでは、東京都大田区でのケースを挙げて紹介します。特区では、旅館業法の適用から除外されるため、フロントや管理人の常駐義務がありません。
また、建築基準法上の用途も「住宅」のままで営業できるため、工事や確認申請などの手続きが不要です。しかし、特区指定された地域の民泊だけに適用されるルートであること、1グループあたり最低3日間の最低滞在日数が定められていることに注意が必要です。
民泊を営業するにあたっての注意点
民泊を経営する際には、以下のポイントに留意することが重要です。
消防設備の設置
民泊は消防法上、旅館やホテルと同様の、特定防火対象物に該当します。よって、たとえ一部屋の場合でも、高性能の消防設備が必要です。とくに、自動火災報知設備の設置には、大規模な工事が必要な場合があります。予期せぬ費用がかかる可能性があるため、注意が必要です。
近隣住民への配慮
民泊施設への変更により、騒音やゴミの増加が考えられます。近隣住民の生活環境に配慮し、迷惑がかからないよう心掛けることが重要です。すべてのルートで、近隣住民に対する営業内容の説明や、周知ルールが定められています。地方自治体の条例などを確認し、適切な対応を講じましょう。
まとめ
民泊を始めるには、住宅宿泊事業法によるルート、旅館業法に基づくルート、特区民泊のルートの3つの選択肢があります。それぞれにはメリットとデメリットがあり、条件に応じて選ぶことが重要です。消防設備の設置や近隣住民との配慮など、運営に際しては注意点も多く、適切な手続きと対策が求められます。地域社会との調和を保ちながら、安心で快適な宿泊環境を提供しましょう。